抜刀道とは

全日本抜刀道連盟の主唱する抜刀道は、旧日本帝国陸軍戸山学校において刀戦の実戦体験と各流古武道刀法を取り入れ編纂された軍刀操法と呼称する「抜刀術」が基になっています。軍刀操法を陸軍将校らに指導していた中村泰三郎先生らが、太平洋戦争の終戦後に軍刀操法を居合道様式に改編し、戸山流と呼称して「戸山流振興会(幾多の変遷後の戸山 流居合抜刀道連盟となる)」を設立した後に、抜刀術を実施している他流儀・流派団体等 との交流を目的として、1977年に「全日本抜刀道連盟」を設立し、抜刀道という新たな刀道を創設して、植木政治先生ら多くの後継者によって継承・発展・普及させています 。

抜刀道とは、端的な表現をするなら日本刀で標的を斬るという行為の中に、自己の精神と肉体の錬磨を昇華させた「活人剣」を視標とする武道です。 日本刀という鋭利な武器を扱うことから、日本刀の正しい取扱いは言うに及ばず、精神を統一して乱れの無い所作で標的と対峙し、心身を統一集中し「気・剣・体」一致させ標的を斬るという鍛錬を重ねることで、人生のあらゆる困難にも平常心を持って立ち向かう自信を涵養させることにあります。

日本刀で標的を斬る為の動作で重要な点は、腰をしっかりと落とした所謂「居合腰」の態勢となり、「柄の握り方(手の内)」「間合い」「斬る角度と刃筋」「刀の止め方と流し方」そして「心構え」のどれが欠けても真面な試斬とはなりません。肉体による技術だけ ではなく集中した心構えが相俟って抜刀道の基本となり本質となるのです。 抜刀道の求める視標は、他人に自己の技術を誇示するものではなく、自己に向き合い肉体を鍛錬し集中力を高め、「剣禅一如」の修行をすることにあります。